スポーツ外傷、関節痛に
新しい選択肢を

自らの力で自らを治す再生医療

「再生医療」は、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞や人工的な材料を利用して、損なわれた機能の再生をはかるものです。

整形外科領域の再生医療はバイオセラピーとも呼ばれ、生体の治癒を促進させることを目的とした治療法として注目されています。バイオセラピーの中で、ご自身の血液を加工した多血小板血漿を患部に注入する治療法がPRP療法です。

スポーツ時におこる肉離れや靭帯損傷からの早期復帰、“使い過ぎ”によっておこる膝や肘などの慢性痛(ジャンパー膝、テニス肘、ゴルフ肘など)の緩和、また50歳以上に多い変形性膝関節症の治療に有効だと言われています。

再生医療と自由診療

当院の再生医療は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を遵守し、第三者委員会による審査の後、再生医療等提供計画書を東海北陸厚生局に届け出ています。安全性を第一に考え、患者さんの十分なご理解と同意の上で施術を行います。

また、PRP療法は自由診療なので公的医療保険が適用されません。保険診療の個人負担は医療費の3割ですが、自由診療では全ての医療費が患者さん負担となります。そのため費用も高額になります、PRP診療に対するご理解のためにも当ページをよく読んでください。

新しい選択肢PRP療法

血液中の血小板を抽出したものを、PRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)とよびます。血小板は「血を固める成分」であるとともに、成長因子を放出して損傷部分を修復する作用があります。PRP療法は、この働きに着目して開発された治療法です。ご自身の血液から精製したPRPを患部に注射するため、安全性が高い治療法です。スポーツ外傷で使われ始めましたが、最近では変形性膝関節症の治療にも用いられています。

変形性膝関節症は、軽度ならば運動療法や薬物療法による保存療法から治療を開始します。さらに重度になった場合は、骨切り術や人工関節などの手術がすすめられます。PRP療法は、保存療法と手術の間を埋める第3の選択肢としても有効だと考えられています。

なお、PRPといっても調整方法(精製キット)によって得られる成分が異なり、それによって特性も異なるといわれています。当院では成分が異なる3つのPRP療法をご用意しています。

変形性膝関節症(軽度~重度の状態)

スポーツ外傷

  • ジャンパー膝のイラスト画像
    ジャンパー膝
  • アキレス腱炎のイラスト画像
    アキレス腱炎
  • 外側上顆炎「肘」のイラスト画像
    外側上顆炎「肘」
  • 足底筋膜炎のイラスト画像
    足底筋膜炎

3つのPRP療法

1)白血球(少)PRP精製キット:ACP

ACPにより精製されるPRPは、人体組織の分解や炎症を促進させる白血球、並びに赤血球を極力除外し、血小板と血漿中に含まれる組織再生優位に働く成分を多く含んでいるという性質があります。

スポーツを続けていると、筋肉・靭帯などへの負荷が積み重なり、自らが持つ再生能力を超えて組織修復が追いつかなくなることがあります。PRP療法は血小板の成長因子が損傷した組織の細胞を刺激し、組織の再生を促し、機能を改善することを目的としています。また、捻挫や肉離れ等の症状から、少しでも早い競技復帰を望む方も適応となる場合があります。

精製キット:ACP

2)白血球(多)PRP精製キット:GPSⅢ

白血球には、炎症を引き起こし不要な組織を壊していく代謝作用があります。

例えば腱や靭帯には柔軟性が必要ですが、炎症によって硬くなった腱に血小板だけ注入しても、ますます硬化し柔軟性は取り戻せません。その点、白血球(多)PRPであれば、白血球が硬くなった組織を分解したうえで、血小板が新たな組織を再生してくれます。

但し、白血球が多いと炎症を起こし過ぎてしまう可能性もあるため、施術部位や病態に適したPRPを選択することが重要になります。

精製キット:GPSⅢ

3)自己タンパク質溶液APS精製キット:APS

APSは、白血球を多く含むPRPに脱水処理を加えて、血液から炎症を抑えるタンパク質を高濃度に抽出したものです。APSはPRPから精製されるため、次世代PRPとも呼ばれており、組織修復を目的としたPRPと比べ、関節症治療に適しています。

変形性膝関節症の関節内は、軟骨の破壊を促す炎症性サイトカインというタンパク質の活動が優位です。これらが過剰になると関節の痛みを引き起こし、放置すると軟骨の破壊が進み膝関節の機能が低下します。しかし我々の体中には、炎症を抑える「抗」炎症性サイトカインというタンパク質も存在しています。APS療法は、「抗」炎症性サイトカインが豊富なAPSを注射し、炎症バランスを整えることで軟骨破壊を抑える治療法です。

精製キット:APS

3つのPRP療法の比較表

スクロールして閲覧できます→

ACP
(エーシーピー)
GPSⅢ
(ジーピーエススリー)
APS
(エーピーエス)
採血量15ml30ml55ml
投与部位関節内・関節外関節内・関節外関節内

全血と比較
白血球
血小板
抗炎症性サイトカイン
費用(税込)関節外:33,000円165,000円385,000円
関節内:55,000円
透視下で行う場合は追加費用44,000円
製造元アースレックスジンマーバイオメットジンマーバイオメット
組織修復を促進不要な組織を分解したうえで修復持続する抗炎症作用

診療の流れ

事前診察日

  1. 申込書により受付をします
  2. 問診、検査(MRI等)、病歴等を確認します
  3. 治療部位の治療前評価をします
  4. 治療日を決定します

PRP診療当日

  1. 治療内容を説明します
  2. 同意書を発行しますのでご記入ください
  3. PRP作製のため血液を採取します
    血液採取量は使用するキットにより異なります
  4. PRPの作製および抽出(所要時間15分 ~ 40分)
  5. PRPを治療部位に注入します
  6. 今後のスケジュール等を説明します
    治療日の標準的な所要時間は、約1時間です


治療後

治療後1カ月、3カ月、6カ月に問診、経過時点の評価等を行います。
治療部位の改善状況の把握並びに厚生労働省への定期報告が必要となりますので、ご協力をお願い致します。

ようそろ抜粋記事

ようそろ217号(2021年夏号)「再生医療外来」抜粋記事PDF
ようそろ227号(2024年新年号)「再生医療PRP療法」抜粋記事PDF