新年のごあいさつ
猪突猛進
謹賀新年 あけましておめでとうございます。
昭和天皇崩御を報じる特別番組を前に、誰かが、長生きでいらしたから次の御代は短いかもねぇ…と不敬なことを呟いたのを子供心に覚えている。
あれから三〇年。平成の世はどんな時代だっただろう。元号の願いの通り、平穏で豊かな日常が当たり前に成った、その分、無慈悲な自然の災厄と無軌道なテロリズムが時代に痛烈な刻印を遺した。
この間、医療の品質や提供体制も様変わりした。生命の価値は無論、個人の尊厳が一層重んじられ、インフォームド・コンセントに象徴される個人の意志や選択、プライバシーの概念も進展した。
平成が幕を開けた当初、五省会はまだ西能病院という一つの所帯で組織されていた。従業員数は160余名、現在の3分の1ほどである。
その一年前の昭和63年4月、西能病院で休日外来診療が始まった。「職員一同、奉仕の精神で」と当時の五省会ニュースに創業者、西能正一郎の言葉が残されている。「24時間戦う」ことが美徳とされた時代。記事中には「職員諸君も人並みに休日は休みたいのが本音であります」と吐露され、なお「各職場で検討に検討を重ね、休まないで診療を行える合意に達した」という宣言でこの果敢な挑戦がスタートする。平成の時代を通じて休日診療を守り通してきたことは五省会の大きな財産だ。
目下、全国の医療機関は時代の狭間に出現する一代限りの十連休をいかに乗り切るか、頭を悩ませている。日本人は働き過ぎだもの、とうそぶいて済ませられたらいいが、現実はそう容易くもない。変わるのも守るのも、知恵と勇気が肝要である。
悩み尽きぬ新年、猪突猛進とはいきませんが、皆さま本年も五省会をどうぞよろしくお願い申し上げます。
医療法人財団五省会
理事長 西能淳